公表された国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第1作業部会の報告書=IPCC提供
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第1作業部会は9日、世界の平均気温の産業革命前からの上昇幅が、今後20年間で1・5度に達する可能性があるとする報告書を公表した。大気中の温室効果ガス濃度は上昇し続け、地球温暖化は既に世界中で異常気象の増加などの悪影響を及ぼしている。今後どんな事態が予測されるのだろうか。【鈴木理之、信田真由美、阿部周一】
未体験の気温上昇 温暖化危機感あらわ
「気候変動は今ここにある問題だ。(気候変動の影響に対して)安全だと言える人は誰もいない。事態はより速いスピードで悪化している」。報告書の公表を受け、国連環境計画(UNEP)のアンダーセン事務局長は、止まらぬ温暖化への危機感をあらわにした。
第1作業部会は気候変動に関する科学的分析や予測などを担当し、報告書公表は8年ぶり。日本を含む66カ国から234人の研究者が参加し、1万4000以上の論文などを基にまとめた。
今回の報告書では、人間の活動が温暖化を引き起こしていることは「疑いの余地がない」と初めて明記した。2013年の第5次報告書では人間活動である可能性が「極めて高い(95%以上)」としていた。その後の研究も踏まえ、今回は1750年ごろからの大気中のCO2など温室効果ガス濃度上昇は化石燃料の大量消費などの人間活動が原因とし、人間が大気や海洋、陸域を温暖化させていると結論付けた。
報告書によると、世界の平均気温は1970年以降、過去2000年で経験したことのない速度で上昇している。2010~19年の気温は、人間活動によって1850~1900年の平均より1・07度程度引き上げられた。陸域の降水量も1950年以降増加しており、特に80年代から上昇のスピードが速まっているという。
温暖化に伴う異常気象も発生頻度が高まり、暑さや降水量などその度合いも強まっている。台風など熱帯低気圧は過去40年でより強いものの比率が高まっており、台風などに伴う降水量も温暖化で増加しているという。
気温上昇が続けば、…
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